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定食
どんなに大きなトラブルも、知らせは例えば一本の電話から。何の予感もなく受話器をとって話を聞き、初めてことの大小を知る。
だからこの日、受付からの内線電話をとった岡田が全くの無防備だったのは、仕方のないことだった。
「あの、岡田さんの甥御さんがお見えです」
「は、甥? いや、甥なんて。……えーと、名前、聞いてもらえます?」
「木暮さん、という方です。大学生?……あ、高校生だそうです」
岡田はしばらく黙り込んだ。
「あー、帰ってもらっ……いや、十分で行くので……、いや、一時間ほどで仕事が済んでから行くので、ホールで適当に待たせておいてください。……いいんです、待たせちゃって。全く気を遣わなくてかまいません。本当に。放っておいてください」
師走も半ば、残業覚悟のこの時期の終業時刻直前。こんな時に、なんだ突然。高校生の木暮って、あいつだよな。九月のあの日に会ったきりだ。
嫌な予感しかしない、とはこのことだ。
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