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「ひなこさん、みかさん、ありがとね。一緒にいてくれてすごく楽しかった」
可愛さキープのまま礼を言う木暮に、二人は照れたようにふふっと笑い、やっと岡田に向き直った。三好さんが言う。
「私たち、帰るところだったのですけれど。まだお一人だったのでちょっとだけお話していました」
「いやそんな、申し訳ありませんでした。お気遣いいただいてしまって。本当に、放り出しておいて良かったんですが……」
岡田の言葉に、皆がくすくすと笑い合う。なんなんだ。
「では、私たちはこれで失礼致します。岡田さん、お疲れ様でした」
「あ、ありがとうございました。お疲れ様」
二人は木暮に、会えて良かったね、またね、と口々に言いながらホールを後にした。
「……おい」
「久しぶりだね、隆ちゃん」
「いつまでその可愛さブリブリでいやがるんだ」
「んもう、冷たいなあ。みかさんもさ、『おじさん、放っておけ~なんて、冷たいわよ』って言ってたよ」
「お前、彼女たちに何を話したんだ!」
「そんな、大したことないよ。隆ちゃん三十そこそこだろうに甥っ子が大きすぎるかなって思って、母は叔父の十も年上なんです、とか」
「勝手に姉貴をババアにするな」
「あ、ほんとにいるんだ。お姉さん。……あとは、冷たいんですよ~昔から。ドSの気がありまして、とか」
「……」
「でも、ドSの奥底には歪んだ優しさがあるから、僕が我慢していい子で待ち続けていたら来てくれるはずです、とか」
「……なんのプレイだ、お前! 二十代女子を甘く見るなよ。俺の社内の評判にかかわるじゃねえか。くそっ、そもそも、なんなんだよ。会社に」
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