定食

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 十分後、二人は落ち着いた風情の定食屋にいた。  個室ではないが、ある程度テーブルの間隔がとられているので話し声はあまり漏れない。くそっ、予算が千円は上がったぞ。  岡田は日替わりで安めの唐揚げ定食にし、木暮は刺身定食を前にご満悦だ。 「ぜってー、わざとだろ」 「隆ちゃんってさ、言葉遣いが悪いよね」 「しかもなんだ、さっきの話は。お前またなんか悪さしたんだろ」 「人聞き悪いなあ。まあ、ちょっと話の順番が違っちゃったけどさ、今、僕、この恰好で学校行ってるんだよね」 「ほー、どういう風の吹き回しだ。乱れ髪にガムでもくっついたか」 「……言葉がいちいち、おやじくっさ。っていうか、隆ちゃんがそう言ったからだって」 「あ?」 「あの時の隆ちゃんからの指令は四つ。顔をさらせ。友だちを作れ。高校生と寝ろ。人生における今の位置を考えろ」  木暮は左手の指を一本ずつ立てながら淀みなく言った。ぽかんとした岡田のもとから、右手の箸で唐揚げをかすめとり口に放り込む。 「おいしいっ。この唐揚げ、さっきのお店のより美味しいでしょ。良かったね~」
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