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木暮はじっと岡田を見た。どこかで見た顔つきだ、と思ったら、前回岡田が説教をした後と同じだった。温度の低い注視。
「なんか今、バカにしてんだろ。いい年して独り身のくせに、二次元のことばっかり偉そうに、って」
木暮は今度は珍しくぽかんとし、やがてくすくす笑った。
「そういうの、二次元って言うんだ。確かにね」
「それだって常識だぞ。その、お前の、そういう感じ。本当に俺のことナメてんだろ。そもそも俺がした説教をまんまやるって、何の意味があるんだよ。何の茶番だ!」
生意気な態度が気に食わない。
若いのに奔放に楽しんでいるのが気に食わない。
俺の醜い嫉妬かと思う、そんな思いも我ながら気に食わない。
岡田はつい、自分の声に力が入ってしまうのを感じた。
「どしたの、急に。……なんか、すごく、勘違いされてる気がするんだけど」
木暮は少し身を引いて話し始めた。
「僕ねえ、バカにするって嫌いだよ。一方的に相手の価値を決めて見下す、その全てが非生産的。まるっきり無駄な行為でしょ。無視するか、認めるか、どちらかで十分。自分にとって少しでも有益なら認めるべきじゃないの」
あれ、こいつ突然、日本語を話し始めた気がする。……と思ったら、エロ以外のことを話すのが初めてなのだ。そんなことに気が付いて、岡田は少し冷静になった。
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