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岡田は軽くため息をついた。本当にこの男は、わからないことだらけだ。
さっきの答えには実際ビビった。中学生で大人と。女と?男と? そもそも親はどうしてるんだ。野放しか。野放しにしては、不思議なくらいしつけが行き届いている、と思う。
アイスはさておき、食事をする時の端正な所作、食べた後の皿の美しさ。そういえば平沢と会った時にも、あんなひどい態度の後で、冷めてまずくなったコーヒーを律儀に飲み干していたのには違和感を覚えたほどだった。
……そうだ、平沢といえば。
「平沢のこと、気になんねえの?」
「なんで?」
「死んだら俺のせいだ、とまで言ってただろ」
「ひなこさんから、お休み中とは聞いたけど。隆ちゃんが落ち込んでないからひどい状況じゃないでしょ」
俺に会った時点で様子はわかったということか。実際、平沢はこれまでの活躍や上司の藤本からの口添えもあって、年始からは実家がある仙台の営業所に異動が決まり、すでに実家にいる。
「そのさ、ちょっと、聞いてみてえことがあんだ。まあ、話したくなければいいけど……」
木暮は手を挙げて岡田の言葉を遮った。
「とりあえずコーヒー頼んでいい? 定食にドリンクついてないって結構びっくり」
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