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「岡田さあ、平沢と仲いいだろう。あいつ最近おかしいの、見ててわかるよな。なんか事情知ってる?」
「いえ、全く。そろそろ飲みにでも誘うかと思っているうちにどんどんやつれてしまって、誘いづらくなっていました。体の具合が悪いのではないかと」
「いや~、俺も声はかけてみたんだが、病気でもないらしいんだよ。……このままじゃまずいだろ、会社にも、あいつ自身にも。仲いいところでさ、ちょっとガス抜きしてやってよ。よろしく、ね?」
自席に戻り、二つ向こうのデスク島にいる平沢に目を向けた。相変わらず土のような顔色で、一心にパソコンに向かっている。そう、あんなふうに必死で仕事に打ち込んでいる素振りなのに、結果を見ればミスだらけなのだ。
……仕方がない。友情に業務命令まで加わった今、腹をくくるしかない。
岡田は思い切って席を立った。
「よっ、平沢、近頃どうよっ」
何気なさを装い肩をたたくと、平沢の身体全体がびくっと震えた。
「……ああ。岡田か」
岡田は空いていた隣席の椅子を引き寄せて腰かけ、小声に変えた。
「最近ちょっとさ、疲れてるみたいじゃん。どう、今日金曜だし、久しぶりに一杯」
「……そういう気分じゃないんだ。すまない」
「なあ、平沢。俺さあ、今までお前にいっぱい話聞いてもらったろ。上のやつらの愚痴、ヤバめの失敗、ちょい恥ずかしい女の話。だから、今度は俺が聞きたい、受け止めたいんだ。本当に、なんっでも聞くし、他のやつには絶対に言わない。お前が俺にしてきてくれたことだ。約束する」
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