定食

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 コーヒーを二人分頼み、待つ間、木暮はじっと岡田を見ていた。全く考えが読めない不思議な顔をしている。 「何、見てんだよ」 「話し相手だもん。どんな人かなぁ、と思って」 「いきなり小学生みたいな言い方すんな。気持ち悪い」  木暮はくすくす笑った。 「聞かれたから答えただけだよ。それに、店員さんがコーヒー置いて帰るまでは何もしゃべるなって言ったの、隆ちゃんなのに」 「お前の話は一般人の耳には毒でしかねえからな」 「隆ちゃん、もはや一般人じゃないんだねえ」  妙に嬉しそうに言う。普段は妖しい目の光が明るく柔らかくなり、ふと、可愛い、と思ってしまった自分を戒める。  店員が木暮の顔をチラ見しながら名残惜しそうに立ち去ると、コーヒーカップに指をからめながら、木暮は突然言った。 「完全犯罪だと思ったんだけどな」 「え?」 「あの人のこと。もう少しできちんと殺せたのに、隆ちゃんのせいで未遂で終わっちゃった」  岡田はしばし黙り込んだ。あの人、というのは平沢か。……そんな流れだったっけ、と当時の状況の脳内再生に努める。 「待てこら。なんでもかんでも俺のせいにしやがって。なんか近頃機嫌いいとか言って、お前が勝手にやめたんだろうがよ」 「機嫌良かったけどさ、そんなんでやめるわけないじゃん。一大プロジェクトだったんだよ、僕にとって」 「じゃあ、なんでやめたんだよ。俺は実際なんもしてなかったぞ」
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