定食

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「無理やりやったようなヤツとその後も寝るってのは、なんかこう、どういう流れなんだ? 殺したいほどの相手だろう。触るのも嫌じゃないのかよ」  木暮の視線がテーブルの上でしばらく止まった。指で唇を撫でながら考え込んでいる。いちいち無駄に色っぽい。 「うん、フツー、そうだね、きっと」 「まあ、この件に関しては、フツーってのはそうそうあっちゃいけないけどな」 「いや。僕は……僕がさ。あの人にあんなこと出来たのは、多分、初めてじゃないからだよ」 「何が?」 「犯されたのが」  反応に困って目をしばたいた岡田を気にせずに、木暮は言葉を続けた。 「何度か、あるから。……んーごめん、まだ詳細には話せないな。いまだに癒えてないのもあって、僕の心がもたない。……まあ、とにかく。彼にやられた時は僕も昔よりは成長してて、冷静になることが出来て、復讐を考えるだけの体力も気力も保てたってこと」  昔。って、いつだ。平沢がことに及んだのは木暮が高一の二月のはずだ。高校一年生にとっての昔というのは、いったい何歳のことだろう。……この容姿。昔から、何かをそそる子供であったには違いない。本人の意思にかかわらず。
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