定食

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「僕さ、誰とでも寝るけど無理やりは許さないの。まさに護身のために空手やってるから強いんだよ。薬が切れたら腕のロープをなんとか緩めて、隙ついてケリでぶっ倒して、準備完了。彼の携帯から僕の写真消して、代わりに裸にして写真とって、……後は僕の言いなり」  伏せていた瞳を上げた木暮と目が合う。 「隆ちゃんはやったヤツと寝たって言うけどさ、毎度僕が犯してただけだよ……それが彼には喜びでしかないって、わかったうえで」  眼鏡越しでもわかる、黒く透ける吸い込まれそうな瞳。そしてその奥には、俺には伺い知れないほどの真っ暗な淵がどろりと口を開けているに違いない。……なんだか、見ているだけで酔いそうだ。 「麻薬と同じ、癖になる快楽だよ。癖にしたのは、僕。そういうの、得意なんだ。得意になることにしたんだ」  木暮の目が不思議な熱さを帯びてきた。平沢をいたぶっていた時と同じ、発情した強い目。フツーの人間なら身につける必要もなかったはずの強さか。  居心地の悪さに耐えきれずに、岡田は視線をはずした。  この男は、この先どんな大人になっていくのだろう。
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