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「……そういえば、四つ目の指令はどうした」
「四つ目? ああ。人生における今の位置を考えろ、だっけ」
木暮の目がふっと落ち着く。
「命の長さもわかんないのに、今の位置なんてわかんないよ。人生って、全てが過程でしょ。ゴールは死。ゴールを目指すんじゃなくて、過程を楽しめないと生きてられない。それだけで僕は必死。……でもまあ、隆ちゃんのおかげで、高校生のご身分も楽しめるようになったよ。少しは気が楽になった」
「お前って、なんていうか。もっと厭世的なやつかと思ったよ」
「厭世的って、無意味でしょ。この世に生きている以上」
やはり強い。若さか。いや、それだけではないだろう。この男の過去がこの男を特別な生き物にしているのだろうか。
「……お前さ。会って二日目の大人に、よくペラペラとしゃべるよな」
「大人じゃなくて、隆ちゃんだよ。そうだ、ねえ、連絡先教えて?」
「嫌だよ。そりゃいろいろ話は聞いたけど、今後も付き合う必然性はねえだろ。ちなみに俺は大人だ」
「ほんっとに冷たいなあ。いいよ、じゃあ、毎回会社に行くから。今日だってひなこさんたち優しくしてくれたし、他の同僚の人にも会ってみたいし」
くそ。こんな爆弾みたいなやつを同僚にさらせるわけがない。
仕方なく電話番号を教えると、木暮は可愛らしく言った。
「今日はごちそう様、隆ちゃん」
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