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水曜日の昼休み。今、岡田は都立神楽高校の門の前にいる。
神楽高校は都立の中では名門校で、制服もなく自由な校風で知られている。生徒たちは好き勝手ないでたちで行き来し、サンダル履きに金髪にピアスという、硬派なアメフト部だった岡田には信じがたいやつらも当たり前のように散見された。
朝は会社に遅刻、午後は外回りついでに登下校時間に見張りについて既に三日。平沢のためとはいえ、俺もこれ以上に暇はない。
今日こそ絶対、捕まえてやる。
あの金曜の夜、平沢の重い口からなんとか聞き出したのは、にわかには信じがたい話だった。
女の話に近いんだけど。と前置きした平沢は、実は、忘れられない男がいるんだ、と言った。半年くらい前に知り合って何度か寝たんだけれど。最近会ってもらえなくなって、つらい。心もつらいし、何より身体がつらい。欲しくて、つらすぎて、眠れない。
全くの堅物だと思っていた平沢の告白に、岡田は瞬きをするのも忘れて聞き入った。そして告白が終わると、何か言わなくてはと思った。何か言わないと俺がショックを受けているみたいだ。
「平沢、ゲイだったのか。俺、知らなかったよ。……いや、でも、つまり結局、こういうことだよな。今まで俺は女に振られた話をさんざんしてきたけれど、今、まあ、お前もそんな状況下にいる、と」
平沢はたっぷり一分は黙り込んだ。目が微妙に泳いでいる。
「そう、なのかな。そうなら、こんな風になって。俺だけこんな体になって。やっぱり、おかしいんだ。そもそもが狂ってた。俺は」
言うなり小刻みに震え始めた。
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