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昼休みの構内は、登下校時間に輪をかけて混沌としている。
いつまでも待つばかりの俺と思うなよ、とつぶやきながら門に入った岡田は、校舎に着くまでためらわずに歩き抜けた。教師も昼飯購買の業者も生徒も入り乱れるこの時間だ。お堅い私立高校ならばいざしらず、ここでは入校許可証の有無など誰も気に留めない。
昼飯、教室で食ってるかなあ。俺らの高校時代には何かにつけ部室に行っていたものだが。まあそんなキレイなやつなら、当たり前のように女と一緒か。いや、男と一緒か?
あれこれ考えつつ二年の教室らしき辺りに着いた岡田は、速やかに近くの生徒を捕まえた。
「木暮凛って、何組か知ってる? わりと背の高いやつ」
急に声をかけられた男子は驚いてしまったようだ。
「あ、僕、代替の教員で一年のとこに入ったばかりで。ごめんね、聞いちゃって」
このくらいは考えてきている。きょうび代替教員の有無だの顔だの、学年が違えば覚えているわけがない。
「ああ、Ⅽ組ですよ。あの教室」
ほら、オッケーだ。ほっとしながら、ついでに訊いてみる。
「顔分からないんだけど、どんな感じ?」
生徒は、うーん、と首をかしげた。
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