サウダージ

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 祖父や親族の男手を借りて、棺桶に入った祖母の遺体は霊柩車に収められるとそれぞれが車に戻っていく。親族ではない参列者はそこで見送り、親族である私たちは個人の車に乗って、前の車に続いて後を追った。 「大丈夫?」  運転しながら夫が聞く。横目で私を心配そうに見ながら車を運転していた。 「って、大丈夫な訳ないよね」 「うん……」 「ごめん」  前の車との間に別の車が入り、私たちは「まじか……」と言いながら予め用意されていたルートを走る。参列して火葬場に向かっているというのに、その間に入るなんて。昔だったら絶対に考えられない行為を、現代は何とも思わないんだろうな。そもそもお葬式の後だなんてことも分からないんだろうな。 「結婚式、義祖母さん楽しみにしてたのに、残念だね。本当に急で」 「うん、でもウェディングドレス着た姿を見せてあげられただけ良かったかな」 「そうだね」  やっと前の車に追いつくと、坂を上がって火葬場に着く。駐車場に車を停めると、外に出て他の親族と合流した。祖母が入った棺桶を先頭に中に入ると、火葬される部屋に案内される。黒の大理石が部屋全体に広がっている落ち着いた室内に三つの扉が設置されていて、その中の一つが開いていた。中には広い空間が広がっており、そこに祖母が入るのだろうと推測する。  従業員の説明を受けて、祖母が広い空間に入っていく姿を合掌しながら見送る。そして扉が閉ざされた。 「大体一時間程度掛かりますので、終わるまで二階にあります控室でお待ちください」  もう一人の従業員が「こちらです」と言いながら私たちを二階にある控室に案内すると、私たちはエレベーターと階段で二階に上がる人に別れて控室に向かう。丁度エレベーターと階段で上がった人たちは同じタイミングで二階に辿り着いて、「変わらないじゃん」と笑っている人もいた。
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