サウダージ

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 五つ年上の夫と初めて出会ったのは、コンペだった。競うもの同士だが空き時間にたまたま話をしたら意気投合して、そこから流れるままに付き合い、最終的にはプロポーズを受けて結婚に発展した。 「何で私なんかにプロポーズしてくれたんだろう」 「こら、佳穂。ネガティブ発言禁止。昔っから佳穂はそうなんだから、こういう時こそポジティブ思考だろ」  従弟が言うと、私は「だね」と微笑した。お茶を汲み終えた夫が戻ってくると、「何の話してたの?」と聞いてくる。 「真仁さんの話」  従妹が言うと、「俺の?」と夫が恥ずかしそうに言った。 「内容は?」 「それは内緒」  私がはぐらかすように言うと、夫が「えー」と残念そうに言う。 「でも良い事だよ、話してたの」 「なら良かった」  夫が微笑むと、私はお茶を一口飲む。それからこれということもせず、ダラダラと周りと話をしながら一時間が過ぎた。アナウンスが鳴って、従業員が迎えに来る。私たちはまたエレベーターと階段で一階に下りる人に別れて骨となった祖母に会いに来た。真っ白な骨が私たちの前に置かれる。確かに祖母は小柄だったけれど、骨だけを見るとこんなに小さいんだと絶句した。 「それでは喪主様を先頭に二列にお並びください。一組ずつ、このようにお箸で一つの骨を掴んでいただき、こちらの壺に入れてください」  私たちが後方に並ぶと、続々と前の人たちが骨を壺に入れていく。骨を掴んだ度に従業員の方が何の骨なのかを説明してくれた。私たちの番になると、私と夫は近くにあった骨を掴む。 「こちらは背骨になりますね」
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