サウダージ

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 私たちは祖母の小さな背骨を壺に入れると、後ろに並んでいた人に箸を渡した。全員が入れ終わると、「それでは残りは私の方でお入れさせていただきます」と言って、一つ一つ何の骨なのかを説明しながら綺麗に壺の中に仕舞っていく。粉さえも刷毛を使って壺に入れていた。空っぽになった銀色のバットを退け、木箱を置くと蓋をした壺を中に入れる。それから木箱に蓋をして、その上から白いカバーを掛けた。よく見かける、遺骨が入った木箱に掛けられるカバー。  あっという間に火葬が終わり、子が花束、遺影、そして遺骨を抱えながら車に乗ると、また斎場に別の道を使って戻った。斎場に着くと、葬式を指揮していた従業員が出迎えてくれる。 「皆様、大変お疲れ様でございました。入る前に、お清めのお塩で皆様を清めさせていただきます」  従業員がそれぞれの足元にお塩を振りかけていくと、終わった人からアルコール消毒をして中に入る。従業員に案内されて大部屋にやって来ると、人数分用意された椅子とアクリルスタンド、そしてお品書きやらが置かれていた。 「それでは喪主様はこちらに。ご長男様はこちらに、ご次男様はこちらにお願いします。他の方々は空いてる席にお願い致します」  私たちが空いてる席に座ると、皆が静まった所で祖父の挨拶が行われる。紙を見ながらつっかえながら文を読み上げると、献杯用の飲み物が置かれる。次に献杯の挨拶を別の方が前に出して行い、皆で「献杯」と言ってお酒を飲んだ。  それが終わって、また談笑が始まる。料理が運ばれ、私は出された食べ物をちびちびと食べながら時間を過ごした。途中出てきた天ぷらは油が凄くて胃もたれしそうになったけど、残すのも悪いと思って全部食べた。見事、デザートまで完食すると、また祖父が最後の挨拶を行った。それで全ての工程が幕を閉じる。これから皆で祖父の家に行って、祖母に線香をあげに行く。
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