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私たちは車に乗ると、前の車についていきながら祖父の家を目指した。
「チョコ、元気かな」
「前に来た時は皆の姿に興奮してたよね」
「ここ最近はコロナで集まれなかったからね」
線路の前で止まると、左右を確認しながら前に進む。ウィンカーを出して斜め右に進み、しばらくして右に曲がった。真っすぐ行って左手にあるのが懐かしの祖父母の家である。駐車場に停めると、私は祖父の新しい車を見て足を止める。
「どうかした?」
夫が不思議そうに聞くと、私は障がい者マークがついた祖父の車を見ながら、目を伏せた。
「結局、お祖母ちゃんの為に買ったのに、一度もお祖母ちゃん乗らなかったなって」
「あー……」
「お祖母ちゃんが乗れるように車いすでも簡単に乗れる車にしたのに」
私がふいっと顔を背けて中に入ると、夫はしばらく私の背中を眺めてから中に入った。鍵を閉めて、二階に上がる。一階が自営業のお店で、二階が祖父母が暮らす家となっている。私たちは二階のドアを開けると、すぐに「ワンワンッ!」とチョコが鳴く声がした。
靴を脱ぎ、閉ざされた扉を開けるとあんなに鳴いていたチョコが急に「く~ん!」と甘えた声を出す。
「チョコー」
私はチョコの頭を撫でると、荷物を置いて「ちょっと待っててね」と言う。リビングを出て手洗い場で手を洗ってからまた戻ると、ソファに座った。チョコが膝に飛び乗って顔を舐めようとしてくる。
「ちょっ、マスクは止めて」
私はズレそうになるマスクを抑えながらチョコの頭を撫でると、チョコが私の肩に頭を預けた。
「ベッタリだね」
夫がそう言いながらチョコの背中を撫でると、私は微笑する。
「チョコも、淋しかったよね」
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