小学校 低学年編

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 幼い頃から前ページの状態になっており、そして私も「交代人格の1人」ということから、今や人格同士の交代も容易になってきた。  意思疎通も出来るし、好き嫌いもハッキリしている。一部の人は訛りまである。外の音は聴こえないが、中の人達の声は聴こえるという不思議な現象も確認済み。  私にとって「一人で生きること」というのは未知の世界だ。  昔からこの、俗にいう人格さんがいた。基本人格をほとんど知らなくても、協力し合って家族のように過ごしてきた。それが「当たり前」だと思っていた。  私は2024年3月末現在、未だこれを主治医に言う事が出来ていない。  本来の家族を自ら捨て、家から命からがら逃げだした今……彼らは私にとって手放せない家族なのだ。  喧嘩することもある。意見をぶつけ合うこともある。それでも、この記憶の無い低学年時代を過ごし、私を生み出して閉じこもった基本人格を守るため、私達は「これが当たり前の世界」で生きてきた。  きっと低学年の頃の「周りから見た詩音」を言葉で表すなら「見えないお友達と話す不思議ちゃん」となるのだろう。  こう考えると、基本人格は私が覚えていない所で全ての記憶を共有した上で閉じこもってしまったのだろうと思う。  誰にも助けを求められないまま、ただ一人で闘って、私達別人格に全ての引導を渡して表舞台から姿を消したのだ。  こうして外の世界を知れた反面、幼い当時の彼女を守り抜き、私が生まれなくても良かった世界線を作ることは出来なかったのかと……そう思うと悔しくて仕方ない。
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