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「いえ、あの、その立花さん、初めましてで、お願いします」
ん?
父の表情はさらに険しくなり、首を振った。
「お願いされてもなぁ……。それに死神が神社に何の用だい? 紛れ込んだのなら、私が祓ってもいいんだがね。神社に死を運ぶものは穢れとされている。……本来なら、鳥居からは入ってこれないはずだが……、葉羅もそれを知っているだろう?」
確かに耳にタコができるほど、父からは聞かされていた。
神社は神様の御社で、死は禁忌である、と。
「……すみません、おれが葉羅ちゃんの大大吉に当たったからかもしれません」
「ふむ。……年始の御祈願で役割を持って来たのか……」
「はいっ、恩も返せたら……ーーー」
「……みっくん、恩って?」
それまで死神くんに向けていた鋭い眼光を、父は私に向けた。
「いや、葉羅には関係のない話だ。それに死神は神様というポジションかもしれないが、あくまで「死」に関連している。いくらおみくじで正式なルートを辿って、ここにいるとはいえ、本来は相入れないものなんだよ。神は命を与えるもの、死は奪うものだからね。対極にいる。だから、死神にはお引き取りを願いなさい。願う人間がいるから、叶えようとする神が存在するんだ」
「……それって、願い事を取り下げろってこと?」
父は呆れたよう息をはいた。
「当たり前だ」
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