トナリの死神くん

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◆◇◆  遡ること、一週間前の元旦。 「おめでとうございまーすっ! 大大吉をひいたあなたは今年の福女でーすっ!」  言い訳をさせてもらえるなら、隣町のパワースポットで有名な神社に行ったのは、出来心だ。  一万分の一の確率で出てくる大大吉というおみくじがある、と巫女達の噂話を耳にして、手をだしてしまった。毎年、三賀日は実家の神社で、巫女のバイトをしていた。けれど、参拝客として、おみくじをひいたことはなかった。凄い確率の「大大吉」につい好奇心をそそられ、おみくじの筒をがしゃんがしゃんと気合いを入れて鳴らしたら、そのまさか。 「え? 私が福女?」  つい数時間前、年明け早々、彼氏に彼氏がいることが発覚したのに。その前の彼氏は借金持ちで、その前に好きになった人は結婚していたが、結婚を申し込んできた(真実を知ったときは冗談かと思った、むしろ冗談であってほしかった)。  揃いも揃って、元カレ達は顔良かった。  何度、騙されないと誓っても、駄目なところを知れば知るほど見捨てられなくなり、イケメンの悲しむ顔は見たくないと、恋心はあっという間に情に変わり、すぐほだされてしまう。  見る目もなく、単純すぎてちょろい私。そして、分かっていてもダメ男を引き寄せてしまう男運は神様もドン引きだと思う。  そんな悪運を払拭するために、今年こそは、と参拝客が減っている実家の神社ではなく、違う神社に頼んでみることにした。  完璧なる出来心。  いや、浮気心、かな。  なのに、福が当たった?
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