トナリの死神くん

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「福女って……、おみくじが大大吉だったから?」 「はいっ! 当神社では毎年おみくじで大大吉をひいた方を今年の「福女」とお呼びしますっ! 願い事があれば、手を合わせていくといいですよっ! 今年は例年に比べて、必ずご利益があるはずですっ!」 「ご利益……」  もう一度、参道に戻り本堂の前に立った。  手を合わせて、さっきよりより真剣に願いを唱える。  今年こそはまともな彼氏ができますように。あと、うちの神社もここみたいに賑わいますように。なんなら、人気の神様だったらうちにも来てください……って、願い事、欲張りすぎかな。  顔を上げると、当たり前に風景はそのまま。そんなものかと、ふぅと息を吐いた。 「……おみくじがうれしくて信じちゃったけど、冷静に考えてみれば、参拝客を集めるための商法だよね……うっかり他の神社の戦略に乗ってる場合じゃなかった……、私も帰って準備しないと」  ポケットの中で、震えているスマホは父からの電話だ。たぶん、恒例の巫女バイトに早く来なさいという催促。 「さっ、帰ろ」  おみくじにさっと目を通し、急いで鳥居を(くぐ)った。まだまだ参拝客は神社にやってきているようだった。 「おめでとーっ、……えっと、立花葉羅(たちばなはら)ちゃん? 今年の福女?」  比較的軽いノリで呼び止められ、振り返ると袴姿の男性が立っていた。背は高く、スラリとした体型だったが、適度に筋肉もあり、歳は私と同じ20代前半ぐらい。はっきりとした二重に、筋の長い鼻と凛と整った顔。  「はい、そうでーーー……」  顔に見惚れた後、すぐ、ずんと身体を押さえ付けるような重い圧が襲った。  冬の気温を無視したプレッシャーは神経を逆撫でし、じわりとした冷や汗を呼ぶ。 「って、……アンタ何者?」 「あー、葉羅ちゃんは見えちゃう人だったな。まぁ、話が早くていーや。大大吉のおみくじもらったしょ? それ、よーく読んだ?」  は?  急いでおみくじを拡げる。
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