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◆◇◆
父が死神くんに気づいたのは、あけましておめでとうございます、を聞かなくなった頃。
元旦に巫女バイトをサボった事をぐちぐち言われていて、(当日はついて来る死神くんをどうにかして撒こうと必死で、バイトどころではなかった)ちょうど死神くんが境内のトイレ掃除を終えたとき。
「葉羅、隣町の神社は参拝するとはどういう考えだい? 利益を得るために「福女」なんて下らない商法で、参拝客を伸ばそうとするのは邪道だよ? それに加担するように参拝するなんてーーー」
「葉羅ちゃーん、トイレはピカピカにーーー」
「誰だ、お前。って、……死神か?」
「ひいっ!」
驚いたのは死神くんで、びっくりしたついでにしゃっくりが始まった。
「こら、はらちゃ、ん、ヒック、わらヒック、うなって、ヒック、はじめましヒック、しにがヒック、の」
「何、言ってんのよ」
面白くて肩を揺らしながら、持っていたペットボトルの水を差し出した。
「掃除ありがとう。はい、水。みっくん、息を10秒止めて、一気に水を飲むと止まるよ」
「え、ほんとヒック、じゃあやヒックって、みヒック……」
と、ふとペットボトルを引っ込めた。
「って、死神って息してないっけ?」
「いや、ヒック、してるって」
「あー、死神でも息ってするんだ」
「……葉羅? 分かって一緒にいるのか?」
「分かってるも何も、みっくんは最初から隠す気ないんだって。私の願いを叶えてくれるらしい」
父は眉間に深い皺を刻んで、死神くんを睨んだ。
「えー、初めまして。死神です」
「あー、オマエ、もしかしてーーー」
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