100人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
***
化粧直しを終えて戻ると、芽衣子は改めて店内をぐるりと見渡した。
吹き抜けになっているのだろうか――頭上でゆったりと回転している天井扇が、その白さも相まってなんとも真新しい。
大きな窓枠の隅を彩るように、所々置かれた観葉植物もあまり見たことがなく、洒落ている。
――もしかして、西洋植物かしら?
後で流伊さんに聞いてみよう、と唇を緩く弧に描き視線を移すと、次に目に入ったのは木目の扉だった。
店内の基調は全て白で統一されているので、余計に目を引く。
この扉の奥に、何があるのだろうか。
元来、好奇心旺盛な芽衣子はこくりと無意識に息をのむ。
何故かその扉の壁にだけ窓が一切ないことも、益々その気を駆り立てる。
何となく気になり周りを見渡すが、テーブル席に満遍なく散りばめられた客たちは、皆各々心地良さげに談笑し、一方のカウンター席でも――彼は店主だろうか――白髪を綺麗に後ろへ撫で付けた初老の男性が、黙々とグラスを布巾で拭いている。
――……って、流伊さんは……っ!?
はたと我に返って、今度は忙しく辺りを見渡す。そうだ。何か足りないと思ったら、彼の姿が見当たらない。
――えっ……えぇ……!?
一体どこへ行ったのだろう。きょろきょろとかぶりを振り続けるが、やはりその飛び抜けた長身の美丈夫は居らず。
最初のコメントを投稿しよう!