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その緑の瞳から予想はついていたが、流伊は所謂混血で、純粋な日本人ではない。
生まれも母の祖国である英国で、彼女が他界したことをきっかけに、父に手を引かれ初めて日本へ渡ってきたのだという。
まだ幼かった彼にとって、目に映る物は全てが新鮮で輝いて見えたことだろう。流伊は特に、お弾きや面子を気に入り夢中になっていたと、少し照れ臭そうに教えてくれた。
しかしそんな平和な日々は、長くは続かなかった。
同年代の子供は皆、小学校へと通い始めるようになったが、流伊はそれを許されなかった。理由などただ一つ――彼が日本人ではないから。
だが、まだ幼い流伊がそんな事情を汲み取れるはずもなく、彼は待ち続けた。いつかきっと通うことが許される。今年は駄目でも来年はきっと。来年が駄目でも再来年はきっと。
しかし待てども待てども、そんな日はやって来なかった。
やがて、近所の子供たちから嫌がらせを受けるようになった。大人たちからも、白い目で見られるようになった。
初めは"外人"、"野蛮人"と罵られるだけだったものも、徐々に尾鰭がついたのか、"目が合ったら呪い殺される"だったり、酷いものだと"ペルリ(黒船で知られるペリー提督)の末裔"呼ばわりされることもあった。
流伊は思わず嗤った。
――馬鹿かお前ら。ペルリは米国人だっつーの!
思えばそれがきっかけだったのだろう。彼の生活は見る間に荒んでいった。
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