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「愛していると、言ってほしいのか?」
流伊の心中など知る由もない彼女の継父母は、その言葉に「おぉ!」「きゃあ!」と喧しく声を上げる。
当の芽衣子は瞳を見張り、固まっていた。
その様子にフッと内心でほくそ笑む。そして、愛などないのに?――そうわざと地雷を仕掛けようとした、次の瞬間だった。
「えっ、あっ……すみません……っ!あの、流伊さんの瞳がとてもお綺麗で、つい見入ってしまっていました……。もしや、何か重大なことを仰ったのですか……?」
彼女は瞳を泳がせあわあわと取り乱したかと思いきや、申し訳なさそうに眉尻を下げ、そんな返答を寄越したのだった。
「…………何だって?」
今度はこちらが呆気に取られる番だった。
これは計算なのだろうか。それともこれが、俗にいう天然……?
そこではたと我に返り、流伊はふるふるとかぶりを振る。
否、今注目すべきはそんなところではなく――。
「綺麗と……そう言ったのか、君は……。この目が……?」
――今まで散々、醜いと……呪い殺されると……蔑まれてきた、この目が……?
嘘に決まっている、と内心で自嘲する。
しかし芽衣子は一度大きくこっくりと頷き、「あ、あの……っ」と、どこか思い切ったようにその華奢な身をテーブルに乗り出し、こう告げたのだった。
「私、その瞳の緑色、とても大好きです!」
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