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暫しの間、流伊との出来事を邂逅していた芽衣子は、例の瓜実顔の女性がこちらへ近付いてくるのを見て、「えっ!?」と思わず声を上げる。
――ど、どうして私のところに……?
人違いではなかろうか。否、絶対にそうだ。
――だってこんなに綺麗な人、知り合いにいたら絶対に忘れないし……
そう内心で零しつつ辺りをきょろきょろと見渡すも、彼女に注目している人物はいない模様。
――ほ、本当に、私?
やがて女性は芽衣子の目の前まで辿り着いた。
「え、えぇと……あの……」
人見知りも相まって分かりやすく戸惑っていると、彼女の方から気さくに「初めまして」と声をかけられた。
「突然ごめんなさいね。私、加賀美流伊の姉の、蓮見杏璃です。……篠宮芽衣子さん、よね?」
――え!?流伊さんのお姉様……!?……の、えっと……ハスミ、アンリさん……?
突然の情報量に、脳内処理が追い付かずプチパニックが起こるが、初対面なのだ。粗相のないようにしなければならない。
芽衣子は軽く息を吸って吐くと、継母に教えこまれた通りに着物の裾を合わせ、優雅に腰を折った。
「流伊さんのお姉様。初めまして。いかにも私は、篠宮芽衣子と申し――」
「やっぱりー!滅茶苦茶可愛い子じゃないのー!ねぇねぇ、流伊のどこが好きなの?あの子、無愛想な上に綺麗な顔してるから、余計に女の子怖がらせちゃうのよねぇ……。あ、芽衣子ちゃんって呼んでいい?私のことも気軽に"お義姉さん"って呼んでね!」
「え、えぇと……。あの……ハイ……」
目を回しながら、なんとかそう返答する。
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