花園に秘す

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 ***  暫しの間、流伊(るい)との出来事を邂逅(かいこう)していた芽衣子(めいこ)は、例の瓜実(うりざね)顔の女性がこちらへ近付いてくるのを見て、「えっ!?」と思わず声を上げる。 ――ど、どうして私のところに……?  人違いではなかろうか。否、絶対にそうだ。 ――だってこんなに綺麗な人、知り合いにいたら絶対に忘れないし……  そう内心で零しつつ辺りをきょろきょろと見渡すも、彼女に注目している人物はいない模様。 ――ほ、本当に、私?  やがて女性は芽衣子の目の前まで辿り着いた。 「え、えぇと……あの……」  人見知りも相まって分かりやすく戸惑っていると、彼女の方から気さくに「初めまして」と声をかけられた。 「突然ごめんなさいね。私、加賀美(かがみ)流伊の姉の、蓮見(はすみ)杏璃(あんり)です。……篠宮(しのみや)芽衣子(めいこ)さん、よね?」 ――え!?流伊さんのお姉様……!?……の、えっと……ハスミ、アンリさん……?  突然の情報量に、脳内処理が追い付かずプチパニックが起こるが、初対面なのだ。粗相(そそう)のないようにしなければならない。  芽衣子は軽く息を吸って吐くと、継母に教えこまれた通りに着物の裾を合わせ、優雅に腰を折った。 「流伊さんのお姉様。初めまして。いかにも(わたくし)は、篠宮芽衣子と申し――」 「やっぱりー!滅茶苦茶(めちゃくちゃ)可愛い子じゃないのー!ねぇねぇ、流伊のどこが好きなの?あの子、無愛想な上に綺麗な顔してるから、余計に女の子怖がらせちゃうのよねぇ……。あ、芽衣子ちゃんって呼んでいい?私のことも気軽に"お義姉さん"って呼んでね!」 「え、えぇと……。あの……ハイ……」  目を回しながら、なんとかそう返答する。
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