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「なんだ……居たのか、姉さん」
ふぅ……とわざとらしく吐息をつき、芽衣子から渋々離れた流伊に、「当たり前でしょ!」と杏璃は突っかかる。
「うちの立派な庭園を買い取ろうだなんて、managerである私が許しませんっ!」
――まね……じ……?
また綺麗な英単語が登場した……と小首を傾げていた芽衣子だったが、かぶりを振って慌てて彼女の元まで駆け寄り、頭を下げる。
「す、すみません、お義姉さん……っ!私がプレゼントだと勘違いしてしまい……」
すると彼女は一瞬瞳を見開いたものの、軽く片手をひらひらとさせ――。
「ううん、芽衣子ちゃんは何も悪くないわ。あなたに、これを見せびらかしたくて堪らなかったグテイが悪いのよ」
――グテイ……?
脳内変換が追い付かず、小首を傾げて思案する芽衣子を他所に、流伊は「何だって?」と目を据わらせて杏璃に詰め寄る。
「何でもありませーん」
ぷいと視線を逸らして、すっとぼける杏璃。
――あぁ、そういうことか。"愚弟"、ね。
ややあって意味を理解でき、思わずくすりと笑みを零した。
杏璃もきっと流伊と同じく、幼い時を英国で過ごした影響で、日本語独特の小難しい漢字の発音に慣れていないのだろう。
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