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すると流伊は、あぁ……と軽く顎を引き、中段、上段の順にしなやかな人差し指を示した。
「これはスコーンといって、ジャムとクリームを塗って食べるものだ。こっちはペイストリー。この層がパイ生地によるものだから、今は普通にパイと呼ぶ方が一般的だろう」
その澱みなくスラスラと語られた説明に、芽衣子は感嘆の息をつき、きらきらと瞳を輝かせる。
「流伊さんの説明、とても分かりやすいです……!まるで先生みたい……!」
そんな反応に、どこか照れ臭そうに苦笑していた彼だったが、ふっと唇の端を軽く引き上げると――。
「君が生徒だと、目が離せなくて困るな」
つんと鼻頭を啄かれたのと、思いがけぬ返しに、うっ……と頬を赤く染める芽衣子。
流伊はくすりと微笑すると、テーブルに置かれたティーカップを手に取り、軽く口をつけた。
やはり鼻梁が通っているだけあって、彼の横顔は様になる。
ほぅ……と息をついた芽衣子ははっと我に返って、気になったことを尋ねる。
「それは、何という種類の紅茶ですか?」
流伊はカップから視線を上げると、今度もスラスラと答えた。
「ラプサンスーチョンという、中国から伝わった紅茶だ。紅茶の歴史の中でも、最も古くから飲まれていたとされている。……あぁ、これはクセが強めだから、君は飲まない方がいいぞ」
いつの間にか吸い寄せられるように、カップに近付いていた芽衣子の唇に、彼はそっと人差し指を押し当てる。
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