花園に秘す

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 そうはっきりと彼を見据えて言い切るや否や、「はぁ……」と悩ましげな吐息がその唇から漏らされ、何か気に障る言葉を使ってしまっただろうかとおろおろと瞳を泳がせる。 ――はっ……!  ふと、芽衣子(めいこ)は咄嗟に口元に手をやった。  もしやこれは、意図せず告白をしたも同然ではないか。様々な人の行き交う帝都の大通りで、しかも大仰に比喩(ひゆ)まで用いて。 ――なんと、はしたない……!  これじゃあ呆れられて当然だわ……と先程よりも更に身を縮こまらせ、しゅんと俯く。  思ったことは、つい何でも口にしてしまうのが、芽衣子の昔からの悪い癖だ。  妻はただ、しおらしい花の如く、夫の隣に控えているべしという継母(はは)の言いつけを、今から破ってどうするのだ。 ――いけない……いけないわ、芽衣子……っ!  (いまし)めと気合いを入れるべく、頬をぺしぺしと叩こうと両手を振り上げかけ、ふとその片方が未だに捕らえられたままであることに気づき――。 「あ……」  それは、予想だにせず起こった。  ほんの一瞬、手の甲が彼の唇を(かす)めた。  微かに伝わる柔らかな感触。その向こうで大きく見開かれた淡い(グリーン)。  かち合った途端、込み上げてきたのは今までとは比べものにならないほどの羞恥で――。 「や……っ」  芽衣子は咄嗟に、無理やり右手をぐいと引き寄せるが、何故か逆に引き寄せ返されてしまった。 「え……あの――」  何を、と言い終わらないうちに、今度ははっきりと手の甲に柔らかなものが押し当てられた。  
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