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二人の身の振り方
時は遡る――
「野蛮人」
セリスが、ラムウィンドスに盛大に食ってかかった後。
呆気に取られて見ていたライアは、アーネストに向かって思わずのように言った。
「あの男……、馬鹿なの? あれだけ邪険にされたあげくに最後の剣のお誘いは、完全にとどめをさされに行っただけじゃない。馬鹿なの? その前で一回ひいておけばよかったのに。え、馬鹿……?」
どこかに走り去ってしまったセリス。
ラムウィンドスは追おうとしたが、アルザイに制止され、踏みとどまっていた。すぐに表情を消し去り「兵舎に顔を出してきます」と言い置き、その場を去っていた。
「あれ……。あれはあの男の『素』なんや」
ライアのもっともな疑問に対し、アーネストは言いにくそうに言った。
「素が馬鹿なの?」
「ライア王女、やめておけ。あいつはあれで、セリスが絡まなければそれなりに優秀な男なんだ。セリスが絡むとあそこまでとは……俺もわかっていなかったが」
苦み走った表情でそれだけ言ってから、アルザイはちらりとアーネストに視線を向けた。
「おい、そこの鬼畜。少し顔を貸せ。お前の身の振りも含めて話がある」
「聞く」
大国の王であるアルザイが、一介の旅人に過ぎないアーネストに割ける時間は本来ないはずであった。
アーネストとて、そのくらいのことはわきまえている。固い表情ながらしっかりと頷き、声に出して返事をした。
アルザイはライアにも目を向けた。小さく溜息をついて言った。
「ライア王女も。セリスのことを含め、話がある」
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