78人が本棚に入れています
本棚に追加
ライアは、腰かけていた寝台に倒れて突っ伏した。
涙目になっているセリスを見ているのが忍びなかったのもあるし、心の中でつっこみが追いつかなかったせいでもある。
(アルザイ様は一緒に寝て、そんなこともしていないの!?)
(アーネストだって、旅の間に手を出せなかったみたいで、セリスに対してあんなに苦しんでいたのに!!)
(あの男は無理やりした!? 既遂!?)
変な笑いがこみあげてきて、頬がひきつれて痛い。
「ライア様……?」
恐る恐るという様子で声をかけられて、ライアは気合で起き上がり、姿勢を正した。
「よく、わかりました。あなたにとって、『男性』はラムウィンドスだけなのね?」
「そんな、僕がもうあのひとを選んでいるような言い方はやめてください!! 顔合わせないようにしているし、近づかないようにきちんと言いましたし……!!」
セリスは何やら必死に言い募っているのだが。
(言ってはいたけど……でも、あの男も真に受けていたかどうか)
力いっぱいセリスがラムウィンドスを「野蛮人」と罵って振り切ろうとしていた場面をしみじみと回想して、ライアは力なく笑った。
「薄々わかっていたつもりだけど。アルザイ様もアーネストも、そこまでセリスの眼中になかったなんて……。不憫だわ、他人事ながら」
「不憫とは……?」
ライアは、しげしげと、セリスを見る。
掛け値なしのうつくしさだ。
(アルザイ様が女を着飾らせるとき何を考えていると思うの? セリスのこの姿を見て、どう思ったことか)
黙ってしまったライアに対し、セリスは手を変えることにしたようだった。
「それで、ライア様は昨日、何をしてアーネストをそんなに怒らせたのですか?」
「……そういえばそんな話、私あなたにしてしまったわね」
この動揺できれいに忘れていてくれたら、と思ったがそうはいかなかったらしい。
実際は何もなかったのが、「抱いて」と言って怒らせました、という事情。さてどこまでセリスに話すべきかとライアが思案したそのとき、ドアをコツコツと叩く音がした。
二人で話をやめて、そちらに視線を向ける。
「姫君たち。少しお邪魔するよ」
気安い口調で二人の素性をすらりと言いながら、その人物はドアを軽やかに開けてきた。
最初のコメントを投稿しよう!