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1.幼馴染みはいつも不機嫌
俺は幼馴染のα工藤翔吾のことが好きだ。
もうずっと前から恋してて、でもΩの俺が16歳のとき初めて発情期を経験してからもう2年も経つのに一向に手を出してくれない。
こんなに近くにいてヒートも何度も起こしてるっていうのに何もないなんてやっぱり見込み無いよな。
これまでも翔吾は何人も女の子と付き合ってるし。αの女の子ばっかりね。
Ωとなんて付き合うの嫌なんだろうな。
ましてや男なんて、Ωでも対象外だろうし。
恋愛の話とか翔吾としたことないからわからない。
俺はずっと翔吾が好きだから本人に恋愛相談なんてすることもできないし。
翔吾は背が高くてスポーツ得意でパッと目を引くイケメン。クラスの中に翔吾のこと嫌いなやつなんていない。
Ωの俺は幼馴染でもなければ話もできないような存在だ。
俺はΩの中でも別にすごい美少年ってわけでもなく、ただの童顔なチビ。
身長が180センチ越えてる翔吾より15センチも背が低い。
下手したらαの女の子のほうがデカいくらい。
勉強もスポーツも中の下くらいの成績。
こんな俺でも、家が近いだけで遊んでくれる翔吾ってイイ奴だよな。
勉強もよく教えてくれるし。
機嫌がいい時は頭なでてくれてそれがすごく心地良い気分にさせてくれる。
俺は翔吾の少し高めの体温を感じるのがすごく好きで、隣りに座って頭なでられたら、胸に顔埋めたくなるのを我慢するのが大変なんだよね。
まあ、今がまさにその状況なんだけど。
翔吾が俺の大好きな低めの声で言う。
「優麻シャンプー変えた?」
「え?変えてないよ」
「ふーん。なんかいい匂いすると思ったけど気のせいかな」
髪の毛を一束すくって匂いを嗅がれる。
「や、ちょっとやめてよ恥ずかしい」
「いいだろ、うるせーな」
やだよ。汗かいてるし。
そう思いながらも、翔吾の傍から離れる気はない。
だってこんな密着できるのはたまにしかない。
機嫌が悪い時は近寄らせてくれないから。
でも、機嫌悪くても会いには来てくれるし家に来いとも言われる。
そういうときは、会うけど触れない距離に居るように言いつけられる。
俺は言われたとおりにする。
大人しく、部屋の隅っこで漫画読んだりして過ごす。
それで帰れって言われたら帰る。
馬鹿みたいだって?
ああ、わかってるよ。でも俺は翔吾が好きだから言われたとおりにしたくてしてるだけ。
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