逝人式

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 まだニキビ跡の残る二十歳を過ぎたとはいえ頼りない息子は、突然訪れた父親の死に連日泣き暮らしていた。それをぼんやりと見つめながら、まだ自分は泣けていないことに気付くと同時に、まだ泣けないと思った。今泣いたら立ち直れる気がしない。私は死ねない、二十年生き延びて逝人式で戻ってくる夫に一言文句を言うまで生きてやる。号泣するのはその日のためにとっておく。
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