逝人式

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 ぽろぽろと涙が出た。何が悲しいのか嬉しいのか分からないのに心は感情の渦に巻き込まれて、目は勝手に涙を流し続ける。必死で渦の中から言葉を拾う。  「…うん、きちんと生きないと駄目ね。お父さんと一緒に逝きたいけれど、私の逝人式にあんたが間に合わないくらい長生きしなくちゃね」 息子が高齢になるまで頑張って生きれば、私の逝人式を待たせなくてすむだろう。  「老々介護になっちゃうかもしれないけど、長生きするわ。後で困らないでね」 涙でぐちゃぐちゃの顔を拭いながらそう言うと、ようやく息子は笑顔を見せた。 「父さんを迎える準備をしなくちゃね」
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