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「欲しいものは全てこの手に収めてきた。素晴らしい芸術を手元に置けるならば、どんな苦労も厭いはしない」
愛おしむように俺の背中を撫でる。心地よい執着。求められる快楽。
「んっ……」
離れた唇の間、名残惜しそうに銀糸が垂れた。赤く燃える黒が俺を捉えている。
「前にも言ったけどな、俺は絵や彫刻じゃねぇんだよ。勝手にされちゃ、黙ってないぜ……っ!」
これ以上の反論は許さないとばかりに唇を塞がれる。波打つ舌が俺を翻弄する。息が上がる。
「手に入れるという意味合いでは、絵画や作品を手に入れるのと相違ない。ある種の比喩表現ということだ。素晴らしい作品を生み出すものは作品同様魅力的に見えるものだ」
そこで一拍置くと、俺の頬を優しく撫ぜた。
「だからこそ……私は、お前が欲しい」
「…………畜生」
俺の悪態を聞いて、あいつは他の誰にも見せない満面の笑みを浮かべた。弓なりに大きく曲がった目、優しく下がった細い眉、綻んだ口元。ふうわりと溶ける雪のような破顔。
あぁ……もう、こんちくしょう。
俺の背がゾワッと湧きたった。腹の底がねじれる感覚が俺を支配し始める。
「……どうしてくれんだよ」
鎌首もたげ始めた足の真ん中を、あいつの方へ押しつけた。そこからじくじくと疼きが駆け上ってくる。そいつが、心の底に渦巻く理性を焼き切っていく。
燻ぶった火種の、パチパチと鳴る音。冷たい手が俺の背に回って、背筋が跳ねた。
「――――その身諸共、燃やしてしまえ」
カツンと歯がぶつかりあう。むせ返るようなあいつの匂い。抱き合ったまま倒れこんだ。布越しに固い肉の棒が鍔ぜりあう。舌の合間から吐息が零れた。下腹の痛みが強くなる。
熱い体をくねらせて、俺は下履きと上着を自分で脱ぎ捨てた。
――――押さえつけている枷は自分で外す。いつ誰に自分を解き放つかは俺が決める。
驚く奴をぶっちぎって、俺はズボンから抜き出したあいつの棒を掴むと、先端を俺の裸の腹に擦りつけた。
「――――だったらあんたが火をつけろ」
暖炉の炎を受けて妖しい笑みを浮かべたあいつが、俺の両足をひったくってこじ開け、俺の中へと入り込んだ。
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