★蜜月にさざめく

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 しかし、奴はそんな俺を見て不敵に笑うと、俺の腰を掴んで自分の棒をより深くへ突き入れた。 「んあっ……!」 「はぁっ……負けるのはお前だ、ワタル。こちらが……先に果てるわけにはいかない」  軽々と片手で俺の体をベッドに突き返し、そのまま覆い被さった。獣が強さを誇示するように俺を押さえつけ、犯していることを見せつけながら強く突き続ける。感じる場所を押し潰されて、俺から再び掠れた絶叫が上がった。脱力して動けない俺を尻目に、奴は悠々と髪を掻き上げてその美しい金を結わいた。本気の、合図。 「それとも……その程度で私に勝てるとでも思ったか?」  俺を見下ろす強気な笑み。この野郎、と呻く言葉は甘い痺れに叩き潰され、俺はえぐり貫かれる快楽に喘いだ。うわ言でもっとを強請って、あいつに身も心も服従する。  勝負ありだ。弱い獣は蹂躙されるだけ。殺されて食われるという絶頂を全身で味わい、受け入れる。  ずるいよなぁ、さっきまでのは芝居だった、とでもいうのかよ。自嘲的な笑みが零れた。  やっぱりあんたが勝っちまうのか。けれど、ある意味それも当然か。あんたと俺じゃ、色々違うもんな。  首筋を甘噛みされ、あいつの緩い動きに体を震わせる。何度イッたんだろう。それでもあいつを求める疼きは増すばかりだ。俺の体が離すまいとばかりにあいつの屹立を抱いて疼いている。  まだ、まだ足りない。もっと欲しい。こんなんじゃ俺は満足しねぇぞ――――。  あいつの肉を体の内から抱きこんで、より深く繋がりあう。  弱者を支配する代わりに持っているものを与え、彼らを庇護する。それが勝った者の義務だ。 「中途半端に放り投げたら許さねぇ。……てめぇが男なら、愛したやつは果てるまで愛しきれ」 「随分と舐められたものだな。……私がそんな安い男であるとでも? 求められているものは分かっている。覚悟しろ。貴様がいくら泣き喚こうとも止めはしないぞ」  そうだ。殺すなら殺しきれ。半殺しでお預けなんてぜってぇ許さねぇ。持てるものを全て出し尽くして与えきる。それがあんたのすべきことだ。そうだろう?  見せてくれよ。あんたが服従するに足る男である証明を。
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