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母に従わない私を満足そうに見ていた英彦さんが、失礼、と言いながらリビングの端に向かった。スマートフォンでどこかに電話をしている。
切れ切れにしか聞こえないけれど、トンとか待機とか言っているようだ。
二か所ほど電話をしていた英彦さんがソファに戻ると、私へ、横に座るように視線で合図をしてきた。
素直に従う私に、今度は央司さんが傷ついた表情を向けてきて、苛立ってしまった。
美那を選んでいながら、私が英彦さんに寄り添うと不満らしい。
やっぱり後継教育を受けていないと、自分のわがままを抑えられないらしい。
「弁護士がもうすぐ来ます。
央司たちの婚姻契約書も一緒に作成しますから。そして、申し訳ないんですけど、予定を変更いたします。
車が確保できましたので、佳織さんの荷物をすべて運びます。もう、こんな家にいる必要はないです。
大丈夫。ある程度の広さはある部屋ですから」
英彦さんは言葉を終わらせると、両親と美那、そして央司さんを刺すような視線で見つめていた。四人はその視線の強さに逆らえないようで黙っている。
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