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「パパ、それって……」
この会社の後継者になるための条件で、美那にとって問題なのは、他の家に嫁いだら、一族には残れるけれど、会社経営には関われないというものだろう。
「ああ、高桑の次期社長夫人だ。
央司さんをこちらの家に入れる条件が、うちも高桑さんに下の娘……美那を嫁がせること。
お互いの子供が後継者の配偶者となれば、血縁が交差するから不満を抑えられる。
株式を交換しない以上、血縁で結ぶしかない」
M&A*が当然の時代に、まさか、会社同士の結びつきを保証するための結婚-政略結婚をするとは思わなかった。
もちろん、恋愛結婚がほぼ不可能なのは理解していたし、受け入れる覚悟はあった。でも、それは経営のパートナーになるほどの有能な人が相手と思っていた。
央司さんという男性の能力はまったく分からない。
兄の英彦さんは知っている。次期社長としてパーティに出席しているし、時々テレビ番組にも登場するから。
誰もが振り返るだろう端正な容貌に、傲慢ぎりぎりの自信に満ちた表情。彼が広告塔になればいいのにと思う。
*M&A-Mergers(合併)and Acquisitions(買収)のこと。同業他社や投資系ファンドが行うことが多いです。日本ではマイナスイメージもありますが、後継者不在の場合、会社継続の方法の一つとして有効です。
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