第一章 業務提携

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 でも、央司(おうじ)さんはまったく表に出てこない。高桑社長に息子が二人いるのは知るけれど、情報がほとんどないので、どんな人か不安になる。  「嫌よ!  あたし、水野(みずの)のために働きたいから大学の専攻決めたのに、どうして会ったこともない人と結婚しないとならないのよ!  どっちでもいいって言うなら、お姉さまが高桑の長男と結婚すればいいでしょ」  やっぱり美那はわがままな子供だと思う。もし、私が英彦さんに(とつ)いで、美那が社長になれたとしても、結婚相手は自由に選べないのに……  社長にはなりたい。でも、プライベートを犠牲にするのは嫌。  そんなわがままは、水野珈琲(コーヒー)だけでなく、どの会社でも通用しない。嫌なら、自分で会社を作ればいいのに、と思う。  父も同じことを思ったようで、美那に厳しい声を向けた。  「何もかも好きにしたいなら、この家を出ていけばいい。自力で生きるなら、何をしても誰と結婚しても自由だ。  だが、水野の後継者になりたいなら、どちらも不可能だ。  佳織は、央司さんとの結婚を嫌と言ってないぞ。自分よりも水野珈琲を優先できるのが後継者だ。  大人しく英彦さんの妻になりなさい。彼は合理的な男性だが冷酷な性格ではない」
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