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私の問いかけに、父は少し表情を緩めて答えてきた。
妻の前ではまったく威厳のない人だけれど、社内ではさすがに違う。
「半月後の日曜日。向こうがその日を指定してきたよ。早く結婚相手と会いたいそうだ。
美那は英彦さんと会ったことはないし、佳織は央司さんを知らないだろう?
写真をもらってきたから、会う前に見るといい」
聞いてホッとする。
まったくどんな人か分からないまま会いたくない。
父が差しだしてきた写真を受け取ると、私は真剣に見つめた。そこには普段の姿と思われる男性が写っていた。
私と同じくらいに見えるけれど、年下と言われても信じそうな幼さが感じられた。
「王子さまみたいな方ですね……」
名前が央司だからといっても、本人が王子のようとは限らない。でも、彼は名は体を表す、という諺どおりの男性だった。
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