第一章 業務提携

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 少し長めの明るい茶色の髪が、光りに()けて黄金(きん)に見える。笑顔が可愛らしく、女性に守ってあげたいという思いを持たせるタイプだ。  着る服がゆったりとしたシャツのせいか、華奢(きゃしゃ)に感じられて、余計に王子のように見える。  注意深く見ると、唇の右側から八重歯が(のぞ)いていた。歯列矯正をしていないと分かる。経営者の息子にしては少し珍しく感じた。  会社経営に関わる人間は、可愛らしさを必要としない。そして、人知れず唇を噛むことも多い。なので、歯並びを綺麗にしないと、噛み合わせの問題が出る。  私も美那も、永久歯が生えそろってから間もなく歯列矯正をした。あまりないけれど、外国の人と会う時、綺麗な歯並びは重要だ。相手も綺麗。  でも、央司(おうじ)さんは会社経営に関わる予定でなかったのかもしれない。  働く会社がグループの中心とは限らない。社長の子供でも、のんびり生きる権利はある。  兄の英彦さんは、とても優秀な人だから高桑の将来は安心だし。  その人が、水野珈琲(コーヒー)の次期社長の夫になる。驚いたのは央司さんも同じはず。大丈夫、きっと仲良くなれる。  大恋愛である必要はない。お互いを尊重できる関係になれるなら。
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