第一章 業務提携

14/15
前へ
/400ページ
次へ
 つぶやくような私の言葉に、父も賛成してきた。  「ああ。後継者でないから、グループのどこかで頑張ってくれればいいと、高桑さんたちは自由に育てていたようだ。  美那も同じだが、あの子と違っておっとりした性格と聞いている。彼なら、水野(うち)の経営に余計な介入をしないだろう。こちらとしても好条件なんだ。  佳織、好きな人との結婚をさせてやれなくて申し訳ない」  父に頭を下げられて私は(あわ)てた。  好きな人はいなかったし、作るつもりもない。  自分が後継者と理解してから、恋愛をしようとは思わなかった。だから、父が謝る必要はない。  「お父さま、申し訳ないなんて……私は全然気にしてないです。  社長になる人間は、やっぱり会社の利益は無視できませんから」  母も資産家の娘。  水野とは業種は違うけれど会社を経営している。建設業だ。だから、水野珈琲(コーヒー)が修繕含めて工事を行う時は、母の実家に頼んでいる。  その繋がりで両親は結婚した。
/400ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2263人が本棚に入れています
本棚に追加