第二章 波乱の顔合わせ

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 やっと意味を理解したようで、母は父に説明するように視線を向けた。  私は表情を消して紅茶を軽く飲んだけれど、心臓が速い鼓動を打っていた。  この家は、母が一番の権力者だ。だから、会社にとって重要な、結婚に関する取り決めに反対したら、破棄になるかもしれない。  そうなったら、水野(みずの)珈琲(コーヒー)は、数年後に身売りの危機になっても驚かない。そうでなかったら、高桑(たかくわ)グループとの業務提携を急ぐ必要性がない。  父も分かっているから、家族での話し合いを行わなかったのだろう。  「高桑グループと業務提携……仕事で協力体制を取ることになった。  その条件が、向こうの次期社長の英彦(ひでひこ)さんと美那の結婚だ。同時に、佳織(かおり)と英彦さんの弟が結婚することも条件に入っている。  お互いの後継者と、それぞれの下の子供が結婚する形で会社同士を結びつけようと……」  「どうして姉妹で結婚になるんです?  佳織は当然としても、美那まで結婚させる理由が分かりませんけど」  意外だったけれど、母はまず父に確認した。父が相談なしで決めたから、理由も聞かないで反対すると思っていた。  美那が不満そうに(ふく)れている。父を責めない母の態度が不満らしい。
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