第二章 波乱の顔合わせ

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 「高桑さんの下の息子……央司(おうじ)さんをこちらの婿養子にすると、長男の英彦さんに何かあった時、次の人間がいないという状況になる。  そんなリスクがあっても結婚を認めたのだから、こちらも応分(おうぶん)の誠意を見せてほしいと」  父の言葉に母は黙って聞いている。  下の子供はスペアという意味にも聞こえるから、母にはあまり気分の良くない内容だと思う。それでも顔色が変わらないのだから、上流階級の妻ではある。  「それに、兄弟姉妹が結婚すると、両家の結びつきが強くなる。向こうは、水野(うち)の親戚のことを警戒していたよ。  介入されたくないから、株の代わりと言われると断れなかった」  長い説明を聞いた母は、内容を把握するように、視線を誰もいない壁に向けた。やっぱり美那は不満そうだ。  「うちの株を高桑さんに譲渡(じょうと)する……そんな重大なことを勝手に進めようとしていたんですか」  母の少し強い口調に、父は汗を(にじ)ませながら説明した。母の実家も、水野珈琲(コーヒー)の株を保有している。  ただの姻戚(いんせき)(配偶者の親戚)ではない。株主なのだ。母が強く言うのも、実家のためだろう。
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