2263人が本棚に入れています
本棚に追加
「高桑さんの下の息子……央司さんをこちらの婿養子にすると、長男の英彦さんに何かあった時、次の人間がいないという状況になる。
そんなリスクがあっても結婚を認めたのだから、こちらも応分の誠意を見せてほしいと」
父の言葉に母は黙って聞いている。
下の子供はスペアという意味にも聞こえるから、母にはあまり気分の良くない内容だと思う。それでも顔色が変わらないのだから、上流階級の妻ではある。
「それに、兄弟姉妹が結婚すると、両家の結びつきが強くなる。向こうは、水野の親戚のことを警戒していたよ。
介入されたくないから、株の代わりと言われると断れなかった」
長い説明を聞いた母は、内容を把握するように、視線を誰もいない壁に向けた。やっぱり美那は不満そうだ。
「うちの株を高桑さんに譲渡する……そんな重大なことを勝手に進めようとしていたんですか」
母の少し強い口調に、父は汗を滲ませながら説明した。母の実家も、水野珈琲の株を保有している。
ただの姻戚(配偶者の親戚)ではない。株主なのだ。母が強く言うのも、実家のためだろう。
最初のコメントを投稿しよう!