第二章 波乱の顔合わせ

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 そして社内では、いまだに企画を通したことがない。  水野珈琲(コーヒー)は男尊女卑の雰囲気が強くて、私が次期社長と知りながら(あなど)ってくる役員も存在する。  そんな役員たちは、伯母に近い人間が多い。新株発行の情報を流したのは彼らだろう。後継者争いと関係しているから厄介だ。  長子として認知されている私でも全員から認められていない。もし、美那が後継者になったら……水野珈琲が大揺れになるのは間違いない。  「佳織さんは営業企画に所属なさっているそうですね。どんな企画を立てられているのか興味があります」  央司(おうじ)さんに挨拶を返す前に、英彦さんから話しかけられて私は困惑した。  私だけでなく、母や美那も不審そうだ。父は(かす)かにバツの悪い表情で、何か事情があるのが分かったけれど、この場では確認できない。  「それほどでは……高桑さんには優秀な社員の方が多いですから、私など」  謙遜(けんそん)の半分は事実だ。英彦さんも分かっているはず。  なのに、妻になる女性よりも先に、その姉に話しかけてきた。彼の意図が分からない。
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