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私と美那が、ほとんど姉妹の縁が切れたのとは違う。羨ましく見えた。
「兄さん……赦してくれるの?」
怖々と確認する央司さんに、英彦さんが溜息をついた。
「佳織とのことは今でも怒ってるさ。でも、美那さんの性格を思うとな……
それに、真剣に頑張るなら、応援したいと思うくらいには大事な弟だ」
兄と分かる言葉に、央司さんの瞳から涙が流れた。多分、私たちを裏切ってから初めて反省したのだと思う。
「ごめん、兄さん。本当にごめんなさい。
美那さんと会ってたのはマズかったけど、最後は赦してくれるだろうって考えてた。だから、あんなに怒るなんてって……でも、もう、そんなこと思わない。
僕、水野珈琲に残る。あの子のためにも頑張らないと」
央司さんの声音には、息子への愛情が込められていた。
思わない経緯でこの世に生まれた子供だけれど、央司さんにとっては大事な息子と分かる。
聞いた父や、お義父さまや英彦さんがホッとした表情に変わった。これで、勝大くんが将来、水野珈琲に入社する可能性が残った。
特に父からは深い安堵の思いが伝わってきた。きっと、孫が将来社長となる未来を残したかったのだろう。気持ちは分かるので、そのことには触れなかった。
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