第二章 波乱の顔合わせ

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 「リンドウの花を見ると、子供の頃から秋だな、と少し寂しくなりましたね。濃い青だからかな」  央司(おうじ)さんの言う意味は分かる。  控え目に咲く紺色の花は可愛いけれど、寂しそうにも見える。  少しずつ昼が短くなって涼しくなる頃の花だから、余計に寂しさを感じさせると思った。  「他にもいろいろな花がありますから、見に行きませんか?」  誘いに素直に頷く。  写真のとおり優しそうで安心できる。情熱的な愛情を持つのは難しいかもしれないけれど、穏やかな結婚生活になりそうだ。  今度はコスモスの群落に向かう。  リンドウの花の傍にいてもコスモスは見えた。可愛くて繊細な感じの花なのに、意外に目立つ。  歩き始めた私たちを見て、美那が駆け寄ってきた。  妹も振袖だから行儀が悪く見えて、私は秘かに眉をひそめたけれど、もちろん美那は気づいていない。
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