第二章 波乱の顔合わせ

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 美那が選んだ振袖は、クリーム色の地に真っ赤なバラが描かれている。結婚前の顔合わせの場に相応(ふさわ)しくない気がする。  どちらかというと、成人式や結婚式なら合いそうだ。  TPOをわきまえないで大丈夫かと思う。  高桑家なら、政治家が来ても驚かない。他には北海道や市町村のような自治体の幹部の訪問も多そうだ。  後継者の妻になれば、相手の評価の対象でもある……そこまで考えて、私は首を振った。美那が、自分で気づくことだからだ。  それに、英彦さんなら、きちんと注意しそうだ。  今も渋い表情で美那を見つめている。正式に婚約をしていないので言いづらいのだろう。  「お姉さまだけでなくて、あたしとも話しましょうよ。下の子供同士で話が合いそうですよね」  腕を(から)めそうなくらい密着しながら、上目づかいで見てくる美那に、央司(おうじ)さんが赤くなっている。
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