エピソード3

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エピソード3

取調室の前に立ち 「コン、コン、コン」 三回ノックすると中から 「はい」 と返答があった。 その低く落ち着いた 声色の返しに妙な違和感を感じた。 だがこの違和感が具体的に何が?と言われると説明が出来ない。 背筋がブルッと震えるのも身体が勝手に 反応している。 固唾を飲み、扉を開けると 少年がほくそ笑み俺を凝視するかのように 見てきた。 今まで経験したことの無い異様な雰囲気に 圧倒されてしまった。 「さぁ…どうぞ始めましょうか」 少年が俺の座る椅子を指さし、 落ち着いた口調で主導権を握ってきた。 少年にしては妙に慣れた感じで、大人びている。 まるでこの時を待っていたかのように 俺の目には映って見える。 恐る恐る椅子に腰をおろし 「それでは取り調べを始める。まず年齢と  名前を教えてもらえるかな」 と問いた。 「年齢は…17。名前は大田雫。  彼女を殺した理由は…刑事さん何だと  思う」 声が上擦って大田君が興奮しているのが 分かった。 そう答えた後の目がキラキラしている。 まるで欲しいおもちゃを見つけたときの 子供のような純粋な瞳だ。    只者ではない。この少年は。 気合を帯を締め直さないとこの場に この太田君のペースに呑み込まれてしまう ふぅとため息を吐き 気合を入れ直した。 「大田君といったね?大田君は人を殺した罪   の重さを理解しているのかな?なんだか  君は人を殺したことをゲームだと思って  楽しんでないかい」 「勿論…ゲームだなんて。そんな一言じゃ  表現出来ないですよ。  このアートは…ね」
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