エピソード4

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エピソード4

「刑事さん…僕は小学生のときに  絵を習い始めました。デッサンを  何回も何回も嫌になるまで繰り返しまし   た。そしてその努力の賜物かデッサンを  書き終えると毎回毎回褒められました。  先生、周りの生徒から  凄いね!流石だな!って。  でもね、自分の中では納得していなかった    んです」 間髪入れずに眼を見開きながら 話す大田君の姿に圧倒されてしまい そのまま俺は黙り込むしかなかった。 「どうも、自分の書く絵はリアルすぎる。  もっと人の持つ負の感情を絵に出したい。  それを表現するにはそう。  血なんですよ。血。」 その言葉を聞いた瞬間 「血だと?」 思わず口から漏れてしまった、 「えぇ。血です。僕が求めていたものは。  人の血には赤血球、白血球、血小板が  流れていますよね?  それらの他に僕は人の感情も流れている  のではないかと思ったのです。  プラスな感情の時は血が鮮血に流れ  色も薄明るい。でも  マイナスな感情のときの人の血は  ドロドロして沼みたい。色も  赤黒い。  僕が欲していたのはこのドロッドロの血」 そう言うと大田君は自分の右手に かぶりついた。 噛まれた右手から 赤黒い血が流れ出した。 その血を見て大田君は涙を流し 「ほら…刑事さん…キレイだろ?  まるでダイヤモンドのように輝いている。  あの娘より僕の方が何倍も何倍も  格別だぁ」   「あの娘?桜さんのことか!」 大田君からあの娘と言うワードを耳にし 俺は正気を取り戻した。    
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