エピソード6

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エピソード6

「あの娘?桜さんのことか!」 「あぁ。桜さんのこと?ウフッ  桜さんの血は見た目の割に中身はドロドロ  だったよ。雑談をしても一方的に話すわ  口を開けば学校の愚痴ばかりだわ  聞いてる方はうんざりするよ。  でもねだからこそ、その血が欲しかった  だからだからね!  何ヶ月も何ヶ月も桜さんに近づくために  無理してコミュニケーションを取ったんだ  これも僕の作品の為だと思えば  苦痛ではなかったよ」 「お前なぁ、頭おかしいだろ?  自分の作品だかそんなもんの為に  一人の女の娘を犠牲にすんのか」 「そんな棘のある言い方しないでよ。  哀しいなぁ。哀しいよ僕。  刑事さん?僕の作品を一回見てから  その言葉言いつけてくれないかな」 さっきまで不気味な笑顔を見せつけていた 大田の表情が一変して 感情を失ったように真顔で語りかけた。 「もうこの際逃げられないから白状するけど  桜さんが作品の一部となった  名付けて  ブラッド・スノー  それは僕の通っている学校の体育館裏に  飾ってあるよ」 「白状するんだな、お前が桜さんを  殺したと」 「コ・ロ・シ・タ・ヨ!」 そのおちゃらけた言葉を聞き 俺は頭に血がのぼってしまい 大田に殴りかかってしまった。 何発殴っただろう。 大田の口からドロドロの赤黒い血が 流れ出す。 大田はそれでもなお 笑っている。 笑って攻撃を受け続けている。 なぜだろう なぜだろう この時は大田が輝いて見える。 血がキレイにキラキラしている。 口から吹き出る血の一粒一粒が 生命の息吹を与えられたかのように 活き活きし、羽ばたいている この血なら飲みたい… この瞬間 相澤崇という人格を失い代わりに 大田雫が俺の身体に憑依した。 その後 自らが犯した罪を認め、大田は 留置所に身柄拘束されることになった。 新人刑事の沢田と共に 大田の証言どおりが確かめるべく 埼玉中学校に向かって 桜さんの遺体を探していた。 この日はまだ一週間前に降った大雪のせいで 雪が未だに溶けておらず積もっており 歩きづらく体力が消耗される一方だった。 「本当にあるんですか?辺り一面  白銀世界ですけど」 沢田が愚痴混じりに俺に問いかけてきた。 「あぁアイツの証言どおりならこの近くに  作品…遺体があるはずだ。頑張って  桜さんの為にも発見するぞ」 「りょーかいです」 気の抜けた返事が帰ってきた。 明らかにやる気のない感じた。 そんな沢田を裏腹に俺は なんとかしてアイツの作品を 見届ければならないそんな使命感に駆られ 目の色を変えて探しまくっていた。 だが見つからない。 だんだんと焦りが募ってくる。 本当に大田の言っていたことは正しい 真実なのだろうか? 仮に嘘を言っていたんだとしたら 少年刑務所送りになった大田は 釈放される。 だがその反面また新たに 作品活動を見させてくれるのかもしれない 新たな刺激を俺に与えてくれるのかもしれない。 そう思うとこのまま見つからない方が 好都合なのか。 刑事としてのプライドと 個人の私情の狭間で葛藤していたとき 「先輩!先輩!こっちです!」 沢田の大きな大きな声が聞こえた。 その声のする方へ振り返るとそこには 雪だるまがポツンと一つ設置されていた。 その雪だるまの方へ足早に駆け寄ると 雪だるまの顔に 桜さんの血を使って描いたと思われる 紅くニコニコした表情が浮き出ていた。 その笑顔の雪だるまを手を使って削ると 中心部に 桜佳音が 紫に変色した 死体が埋め込まれていた。 こちらもすこやかに笑っている。 胸の前に両手を交差されており まるで現代に生まれ変わった クレオパトラと評しても良いほど 一つの作品として出来上がっていた。 それを見た俺、相澤崇は 一つ決意を固く固めた。 俺も大田雫を見習って作品を創作したい。 幸い今この場所には沢田と俺二人だけ。 また人気のない所に建てられたこちらとしては好都合の学校だ。 大田が選んだ理由もよく分かる。 「なぁ沢田、ちょっとお願いがある」 「この場に及んでなんですか」 「俺の創作物の素材になれ」
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